イマージョン教育とは?その2つのメリット・デメリット

カナダやアメリカなど海外で盛んに行われ、その効果が実証されているイマージョン教育。

日本でも年々注目が高まり、今後導入する学校がさらに増えることが予想されますが、具体的にはどのような学習方法なのでしょうか?
また、イマージョン教育を行ううえで、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

本文ではイマージョン教育について、学習方法や細かい分類とともにメリット・デメリットや日本で導入している学校をいくつか紹介します。

イマージョン教育とは?

①外国語を用いて言語以外の科目を学習すること

効果が認められているカナダ発祥のバイリンガル教育の一つがイマージョン教育(イマージョン・プログラム)です。

学習方法としては、外国語を一つのツールとして使用して、言語以外の科目を学びます。
また、短期的な学習法ではなく幼稚園や小・中学校から高校卒業までの長期的に実施される教育プログラムです。

immersionという単語は「浸すこと」「浸水」という意味の言葉で「没頭」や「熱中」という意味も持ちあわせています。
英語に限らず外国語を使って学び、異なる二つの言語を身につけるための学習法ですが、日本では英語イマージョン教育を指すことがほとんどです。

 

この学習法では、英語を使用して算数や音楽、体育などの他の科目を学習することによって自然で実践的な英語の習得を図ります。

授業では、先生の話はもちろん、生徒からの質問や読み書きにも英語を使用。
英語を聞き取る力や自分の考えを英語で話す力などのコミュニケーション能力、読み書きなど高い英語力の習得が期待できます。

その最大の目的は、英語の習得や他の教科の学習と日本語の運用能力を保持し、さらに伸ばすことです。
英語に「浸す」とはいえ、日本語の習得をおざなりにしてしまう教育プログラムではありません。

イマージョン教育は日本語を習得するとともに、実践的に英語を身につけていくことが可能になります。

②イマージョン教育には様々な種類がある

イマージョン教育は、始める時期や母国語と外国語の比率という2つの視点で種類分けができます。

始める時期(年齢)で分類
早期イマージョン 5・6歳からスタート
中期イマージョン 9・10歳からスタート
後期イマージョン 11~14歳の間にスタート

開始時期は、早ければ早いほど英語に触れる時間が増え、効果もより得られやすくなります。

 

母国語と外国語の比率で分類
完全イマージョン(total immersion) すべての教科をほぼ100%外国語で学ぶ
部分イマージョン(partial immersion) 一部の教科を外国語で学ぶ
二言語同時学習イマージョン(dual language) 母語・外国語を組み合わせて学ぶ
双方向イマージョン(two way immersion) 二つの言語それぞれを母語とする生徒が混在

完全イマージョンは、すべての教科をほぼ100%英語で学習。

日本語の読み書きは、ある程度英語の学習が進んでから(おもに2・3年後に)始め、学年が上がるごとに日本語の割合を増やしていきます。
最終的には、英語・日本語50%ずつくらいの割合になり、社会で使える自然な英語のマスターを目指します。

 

部分イマージョンは、一部の教科だけを英語で学習。

英語での学習割合が50%程度で、教科ごとにツールとして使う言語を分けています。
日本には、部分イマージョンを取り入れているところが多数あり、英語が全くできない状態からでも問題なくスタートできる工夫がなされています。

 

二言語同時学習イマージョンは、英語と日本語を組み合わせて学習。

どちらの読み書きも同時に学習を開始する場合と、日本語の読み書きを最初に開始する場合があります。
最終的には、英語・日本語のどちらとも読み書きができることを目指した学習法です。

 

双方向イマージョンは、英語・日本語それぞれを母語とする子たちが50%ずつ混在するクラスによって行われます。

どの教科をどちらの言語で学習するかは、学校や学年によって異なりますが、英語・日本語を50%の割合で使用。
苦手な言語を習得しつつ得意な言語ではクラスをリードし、生徒たちがお互いに補い合い協力して学習します。

効果的であるという研究結果もありますが、それぞれの言語が母語の生徒を半数ずつ集める必要があるため、世界的にも実施している学校が少ないのが現状です。

③イマージョン教育の歴史

1965年にカナダのケベック州(フランス語圏)の幼稚園で初めて導入されたイマージョン教育。

母国語が英語である生徒の保護者による「英語もフランス語も同じように習得させたい。実用的なフランス語が学べるプログラムをとり入れてほしい」という意見が導入のきっかけです。

このときは、本格的な導入ではなく、試験的な導入でした。
その後、言語習得や学力向上の効果が認められて、フランス語のイマージョン教育がカナダ全土で行われるようになったのです。

 

アメリカの公立校での導入は1970年代。
2011年にはアメリカの500校以上で、いろいろな言語のイマージョン教育が行われるようになりました。

アメリカでは、日本語を習得するための「日本語イマージョン・プログラム」を実施している学校も数多くあります。
現在はカナダやアメリカだけではなく、韓国や南アフリカなど世界各地に広がり学ばれています。

 

日本では1992年に初めて本格的に導入されました。
静岡県沼津市の加藤学園(暁秀初等学校)が日本初のイマージョン教育導入校です。

その後2005年には、群馬県太田市にぐんま国際アカデミーが開校。
2020年には、公立小学校としては初めて八町小学校(愛知県豊橋市)で導入されました。

イマージョン教育のメリット

①英語力が向上する

イマージョン教育の一番のメリットである、英語力の向上。
英語以外の科目を学ぶなかで、自然にネイティブな英語が習得できます。

ネイティブスピーカーの先生による授業で、読み書きもネイティブなレベルに達するといわれています。
その理由には、英語に触れる時間が長いことが挙げられます。

小学校から高校までの学校での授業時間は960時間程度なのに対し、9・10歳でイマージョン教育をスタートすると授業時間は3,000時間ほどになります。

このように、触れる時間の差が英語力の向上につながるのです。

②理解力・認知力が向上する

イマージョンに教育は、ものごとの理解力・認知力が向上するというメリットもあります。

その裏付けとなるのが、カミンズが唱えた「敷居理論」です。
敷居理論は、3階建ての家に見立てて説明されます。

それぞれの階(言語レベル)の間に敷居があるとして、その敷居を超えると言語だけではなく、認知力が向上するという考え方です。

敷居理論

均等バイリンガル(二言語とも言葉のレベルが高い)

このレベルの子供へのバイリンガル教育は、認知的にプラスの影響を与える

第二の敷居

偏重バイリンガル(片方の言葉のレベルが高い)

このレベルの子供へのバイリンガル教育は、認知的にプラスもマイナスも与えない

第一の敷居
限定バイリンガル(二言語とも言葉のレベルが低い)

このレベルの子供へのバイリンガル教育は、認知的にマイナスを与える

上記のように、2段目の敷居を超えた均等バイリンガルの子供に、バイリンガル教育をすると認知的にプラスの影響を与えます。
二言語で一定以上の語学力を身に付ければ、その後バイリンガル教育を受けることによって高い理解力や認知力が得られるのです。

イマージョン教育のデメリット

①高額である

一つめのデメリットは、かかる学費が高額であることです。

たとえば、日本初の導入校である加藤学園暁秀初等学校では、他のクラスに比べて月額費用が30,000円高くなっています。(※)
使用する教科書などの教材は、一般的な幼稚園や小・中学校で使用する教材とは異なり、独自に開発をして使用します。

また、ネイティブな英語を話せるだけでなく、他の教科を教えることができる教師を採用する必要があるので、採用にもコストがかかるのです。

加藤学園公式HP

②中途半端だとかえって逆効果

先ほど触れた敷居理論では、「二言語とも言葉のレベルが低い子供にバイリンガル教育を行うと、認知力にマイナスの影響を与える」とも提唱されています。

敷居理論の一階に位置する「限定的バイリンガル」の子供にイマージョン教育を行うことで、理解力や認知力にマイナスの影響を与えてしまうのです。
具体的には、理解力や思考力がその年齢に相応したレベル以下になってしまう可能性があります。

かえって逆効果にならないように、中途半端にならないように親によるサポートが大切です。

イマージョン教育を受けられる学校一覧

つづいて、イマージョン教育を実施している学校を6つ紹介します。

 

加藤学園暁秀初等学校(静岡県沼津市):イマージョン教育のパイオニア。

子供の心の壁や生徒同士、先生と生徒の壁などを排して子供の可能性を最大限に引き出していく教育が特徴です。
また、生きた英語とともに国際人としてのマナーも学べます。

1日の学校生活の50%以上を英語で過ごし、自然な英語の習得と文化理解を目標にした学校です。

 

ぐんま国際アカデミー(群馬県太田市):小中高12年一貫教育を行う学校です。

先進的・実践的な英語教育が特徴で年間授業時間が公立校よりも多く、英語で行う授業の割合がどの学年でも70%前後です。
「型にはまった教育や習慣にとらわれず、目標を持ち自由な発想や工夫を試みる」「豊かな感性を育み、主体性や積極性を養うことを重視した教育」が大きな特色です。

 

暁星国際流山小学校(千葉県流山市):どの国の人とも積極的にコミュニケーションができる能力や勇気を養い、国際人として活躍できる人材の育成に力を入れている学校です。

英語検定・漢字検定・数学検定などを通して、大きな自信と新たな学習意欲をもつことができます。
また、英語イマージョン教育だけでなく、毎日1時間のフランス語授業も実施しているのが特徴です。

 

LCA国際小学校(神奈川県相模原市):日本人としての教育をしっかり行ったうえで、英語を使いこなし国際社会を舞台に活躍できる人材育成を目指している学校です。

学校生活の中で、考え感じる力やコミュニケーション力を養い、個性を活かした教育を行っています。
アメリカのカリキュラムや指導法を取り入れた授業、日本の指導法の良さを取り入れた授業内容が特徴です。

 

聖隷クリストファー小学校(静岡県浜松市):テストの点数を取るための英語教育ではなく「読む・書く・聞く・話す」の4つをバランスよく身に付けることを目指した教育内容になっています。

また、英語での主張や話し合い、協力して問題を解決するコミュニケーション能力を引き出す学習法が行われている学校です。
日本人としてのアイデンティティーを大切にし、グローバル社会で様々な人々と対等に付き合える真の国際人育成が特徴です。

 

英数学館小学校(広島県福山市):英語イマージョンで英語力を自然に伸ばし、知識の理解・思考力・粘り強さやコミュニケーション力を養います。

生徒が主体的に考えるプロセスで多面的にものごとをとらえながら、協力して問題を解決する力を身に付ける教育が行われています。
知識詰め込み型の授業ではなく、生徒の疑問を大切にし、対話を中心とした授業が特徴です。

まとめ

今回は、イマージョン教育の概要とメリット・デメリットを解説しました。

イマージョン教育は、二つの言語を習得できるだけでなく、認知力や理解力を高められる学習方法です。
また、日常的に英語に浸ることで、多文化への理解の深まりやコミュニケーション能力の高まりも期待できます。

英語を科目としてではなく、コミュニケーションの手段として自然な形で学ぶことができるイマージョン教育。
普段の学校生活のなかで、自然と英語を身に付けられるバイリンガル教育をお考えの方におすすめの学習法です。

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